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脳卒中(脳梗塞と脳出血)
一般に脳神経は死滅すると、二度と回復はしません。もちろん、脳出血や脳梗塞によって侵された脳神経細胞は死滅されます。
多発性脳梗塞とよばれるもののほとんどは痴呆・パーキンソニズム(脳血管性パーキンソン症候群)の原因となることが多いようです
脳血管性の認知症は治療やリハビリによって、病状が改善することが多いのです。
一端死滅した脳神経細胞は回復しませんが、それを補うように他の神経が活性化されたり、発達してくることがあります。
脳卒中になっても、寝たきりにならないようにリハビリをされることが肝心です。
脳梗塞の分類
■アテローム血栓性(脳血栓症)
動脈硬化によって動脈壁に沈着したアテローム(粥腫)のために動脈内腔が狭くなり、十分な脳血流を保てなくなったものです。また、アテロームが動脈壁からはがれ落ちて末梢に詰まったものもこちらに分類されます。
■塞栓性(脳塞栓症)
脳血管の病変ではなく、血液から流れてきた血栓が詰まることで起きる脳虚血をいいます。
それまで健常だった血流が突然閉塞してしまいます。原因として最も多いのが心臓でできる血栓が多いようです。
他に腫瘍の一部剥がれて、流れてきて詰まる腫瘍塞栓などもこれに含まれます。
■ラクナ梗塞
小さな梗塞で、直径15mm以下の梗塞をいいます。
ラクナ梗塞がいっぱいできると多発性脳梗塞になります。
多発することで痴呆・パーキンソニズム(脳血管性パーキンソン症候群)の原因となることが多いです。
脳出血
脳には酸素や栄養を運ぶための動脈が、沢山混在しています。
脳出血を引き起こしてしまう原因は急激な血圧の上昇です。血圧が上昇すると、血管に急激な圧力がかかってしまうため血管が破れて出血してしまうのです。
本来、血管は弾力があり血液の圧力を吸収することで、血圧が上昇しても破れないようにできています。
血管の壁は内側から内膜、中膜、外膜という3層で出来ていて、その真ん中の中膜は筋肉組織で出来ています。これによって血管は伸縮性があるので、簡単には破れません。しかし老化により、血管が段々と硬くなります。また、血管にコレステロールが付着することで起こる動脈硬化や長年の高血圧症などで血管に負担をかけ続けたり、それにより血管壁がもろくなることで、血管は弾力性を失ってしまいます。このもろくなった血管の状態で、急に血圧が上昇した場合、血管の壁に圧力が加わり破れるということが起こります。高血圧性脳出血とも呼ばれます。
出血した血液は血腫という血のかたまりを作ります。この血腫が周囲の脳細胞を圧迫して、脳を破壊するため、脳が障害されるのです。
ストレスや階段を昇る時、暖かいところから寒い所へ移動した時、トイレで力む時などに起こる事が多いのです。食事中の脳出血も珍しくはありません。
症状は、出血を起こした場所により異なってきます。脳は場所ごとにその役割が異なります。
脳出血は、脳の中でも大部分を占める大脳でよく起こるといわれています。
■大脳の中でも特に多いのが被殻出血です。
被殻出血は、そのすぐ横にある内包という場所を圧迫します。
「内包」は、手足を動かす運動神経や、手足からの感覚を伝える神経など、神経線維の集まっている重要な部分です。
被殻出血はこの内包を圧迫することで、手足の麻痺を引き起こしてしまいます。この時、出血が右脳に起これば左半身に、左脳に起これば右半身に麻痺や感覚がなくなるといった症状が出ます。
■脳出血で次に多いのが視床出血です。
視床とは、私たちの意識の中枢で、この部分が出血すると意識障害を起こしてしまいます。
以前に、私が関わった施設の利用者さんで、食事が終わった直後くらいに、脳出血を起こして大変な思いをしたことがあります。脳出血を起こした直後より意識がありませんでした。その方は脳梗塞がもともとあり、視床出血を起こしてしまったのです。
食後に他の利用者さんとテレビを見ている最中に、突然におおきな鼾をかいて(他の利用者さんには眠っているようにみえたらしい)車椅子にうな垂れてしまったのです。すぐに処置をして医療センターに搬送しましたが、回復は困難な状態でした。
■次に多いのが皮質下出血。大脳皮質の直ぐ下に起こる出血です。割合としては、全体の5〜10%程度です。
大脳は、右脳と左脳とに分けられていて、左脳は論理的な考えや、言葉を話したりということに使われ、右脳は情緒、芸術的なことなど感性を司ります。
脳出血を起こした場所が、左脳か右脳かによって、現れる影響は違ってきます。
出血した時は、突然の頭痛が襲い、場合によって意識の低下も起こします。また、視界の右半分あるいは左半分だけが見えなくなったりすることもあります。
ろれつが回らなくなったり、ひどい場合は口がきけなくなったりする場合もあるのです。
■1番怖いのが脳幹出血です。脳幹は、呼吸をコントロールし、内臓を動かす神経の中枢があり、生命維持に欠かすことのできない場所です。そのため、脳幹出血を起こすと、死に直結する可能性が高いのです。
■他に小脳出血があります。小脳は平衡感覚や左右の手足をスムーズに動かすなど、体のバランスを保つ働きをしています。そのため小脳出血は、体のバランスを崩してしまい、ふらふらして歩けなかったり両手で物を持てなくなるなどの症状が出たりします。さらには、脳幹に近いため、脳幹出血と同様、脳幹を圧迫しやすく、命を落とす可能性も高いのです。
■くも膜下出血
脳は内側より軟膜、くも膜および硬膜で覆われています。、くも膜と軟膜の間に出血を起こす疾患をくも膜下出血とよんでいます。その原因は脳動脈瘤、脳動静脈奇形(脳血管腫)などが破れて起こるのが大部分です。
そのほか頭部外傷、高血圧(動脈硬化性出血)によっても起こります。
高齢者だけでなく若年者でも発症します。
症状としては突然激しい頭痛が起こります。頭痛は軽度のものから意識障害を伴う強度なものまであり、強度な頭痛は頭を割られるような激しい痛みがおこります。そのほか、項部硬直と言って首の後ろの部分が硬直することがみられます。また、吐きけ、嘔吐があるのも特徴です。
大部分の症例では運動麻痺や感覚障害はみられないようですが、稀にこれらの症状を伴うこともあります。また動眼神経麻痺と言って、眼球を内側、上方、下方に動かすことができないなどの症状が起こることもあります。
対処法としては、嘔吐、意識障害、痙攣をきたすこともあるので、着衣を緩め、静かな場所に安静に寝かせます。
吐物により窒息を避けるため、顔は横に向けます。頭部は挙上したり、下げたりしないで水平に保ちます。痙攣を起こしたときには、舌をかみ切ったりしないように、タオルやガーゼを巻いた物を上と下の歯の間に入れします。この際、手指をかみ切られたりしないように注意します。
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